割れ窓理論

 

今日のテーマは 『割れ窓理論』 ということで、前回のテーマ『環境デザイン』に関連する話になります。

 

「割れ窓理論」とは、アメリカの犯罪学者ジェームズ・ウィルソン氏とジョージ・ケリング氏が提唱した、「小さな不正を正すことで、大きな不正を防ぐことができる」という環境犯罪学の理論です。

建物の窓が壊れているのを放置すると、割れた窓を見た人が、「この場所は防犯に配慮していない」と感じ、犯罪を起こしても大丈夫ではないかと考えることから、やがて他の窓も壊されてしまうことになり、更には犯罪の発生件数が増えることにも繋がる。しかし、割れた窓を放置せずにすぐに修理し、きれいにしておけば、風紀の乱れを感じさせることがないので、窓が壊されることはなく、犯罪も発生しない…という考え方から、「割れ窓理論」と呼ばれています。

もう少し簡単に言うと、「窓が割れていたり、ゴミが捨てられてあったり、壁に落書きがあったり、という状態を放置することで、もっと多くの窓が割られ、もっとゴミが捨てられ、もっと落書きが増えていく…。すると風紀が乱れ、犯罪しやすい雰囲気が作られていき、結果、犯罪多発地域となってしまう…。しかし、それらを放置することなく、簡単な兆しのうちに対処し、きれいな状態を維持することで、良い雰囲気が作られ、結果、犯罪を減少させることができる。」ということです。

 

そして実際、この「割れ窓理論」を活用して成功した例がいくつかありますので、その中から3つ紹介したいと思います。

 

①《ニューヨークの犯罪減少》

ニューヨークのジュリアーニ市長は、非常に治安の悪いこの街を、「割れ窓理論」を利用して、凶悪犯罪の件数を激減させることに成功しました。

市長は、地下鉄の落書きや、地下鉄内において多発していた無賃乗車や、交通違反といった、軽犯罪を徹底的に取り締まることで、徐々に地下鉄内や公道における犯罪を減少させることに成功。その結果、ニューヨークにおいて発生していた凶悪犯罪の件数自体も減少し、治安が大きく回復しました。実際、就任してから5年間で、犯罪の認知件数は、「殺人が67.5%、強盗が54.2%、婦女暴行が27.4%減少」したということです。

ジュリアーニ元市長は次のように言っています。

「確かに殺人と落書きの間には大きな差があります。ですが両方とも犯罪であるという意味では同じです。そして、軽微な犯罪を許容する風潮は、より重大な犯罪をも許容することに繋がりうるのです。」

 

②《ディズニーランドのマナー向上》

ディズニーランドでは、施設内のちょっとした修繕点をおろそかにせず、すぐに対処するようにしているそうです。小さなゴミをすぐに回収したり、ペンキの塗りなおしや破損箇所の修繕などを、見つけ次第行うことで、施設の清潔感・美しさ・良い雰囲気を維持。これにより、従業員のサービス向上だけにとどまらず、来客のマナーをも向上させることができているそうです。

ちなみに、施設内の清掃は、なんと24時間体制だそうです。通路は15分おき、トイレは45分おきに巡回していて、「汚れる前に清掃」という意識で取り組んでいるようです。清掃キャストの皆さんは、あの広大な敷地内を毎日隅々まで清掃し、翌日の開園時間までには完璧な状態に仕上げているのです。

 

③《アップル社再建》

1996年、業績不振に陥っていたアップル社を立て直すべく復帰したスティーブ・ジョブズは、まず、 ❝働く環境❞ を徹底的に変えたそうです。

その頃のアップル社内は、遅刻が常態化し、ペットを持ち込み犬と遊んでいる社員までいたという程、❝やりたい放題❞ だったそうです(ジョブズは後に「学級崩壊のような状態だった」と語っています)。

ジョブズはその ❝ぬるい雰囲気❞ に『喝!』を入れるべく、汚いオフィスを改築し、小さなミスや違反行為をきっちり取り締まるなど、社内環境を改善。 色んな意味で、従業員が仕事に邁進できる環境を作り上げました。この時のジョブズの行動が、アップル社再建の源となり、現在の繁栄に繋がっているのです。

 

 

ということで、今回は『割れ窓理論』というテーマでお話しました。

この『割れ窓理論』からの学びは、「環境を変えることで、行動を変えることができる(自分も周りも)」ということと、「小さいことを軽んじてはいけない・小さいことを疎かにしてはいけない」ということでした。

結構重要なマインドセットです。

 

それでは、今日も最後に、関連する偉人の言葉をいくつか紹介します。

 

「好ましい環境と好ましからざる環境が、そこに住む個人の成長に貢献する。」

ジェームズ・アレン(イギリスの作家)

 

「明確な目標」があれば変化を起こして、環境を自分を従わせることができるが、そうでなければ、周囲に流され環境に支配されてしまう。」

アンドリュー・カーネギー(アメリカの実業家、「鋼鉄王」)

 

「天下の難事は必ず易きよりおこり、天下の大事は必ず細きよりおこる。」

老子(中国春秋時代の哲学者)

 

「一万石の米は一粒ずつ積んだもの。万里の道は一歩ずつ積み重ねたもの。小事を努めて怠らなければ、大事は必ず成就する。」

二宮尊徳(江戸時代後期の経世家、思想家)

 

「問題は、小さい事から始まって、大きくなるものである。油断してはならない。」

伊達政宗(戦国大名)

 

「大事な時は、皆が大変だ、大変だということで、一門や部下たちが大勢集まって議論する。だから、大事なことは大事には至らない。きちんと解決できる。ところが小事になると、こんなことは大したことではないと皆が馬鹿にする。誰も聞く耳を持たず、知恵を出し合わない。そのため、小事が思わぬ大事を引き起こすことがある。油断のなせる業である。小事が大事に至らないためには、小事も大事だと思って、大事の時と同じような議論と慎重な判断を下すべきだ。そうすれば、決して後悔することはないだろう。」

藤堂高虎(戦国大名)