睡眠の重要性

 

今日のテーマは 『 睡眠の重要性 』 です。

 

アスリートへのアンケート

「スポーツ選手などのアスリートは睡眠をとても大切にしている」というアンケート調査結果があります。

2012年ロンドンオリンピックを目指して、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で活動していたアスリート110名を対象に、睡眠に対するアンケートを実施した結果、「しっかりと睡眠を取る」と答えた選手が、全体の84.5%にのぼりました。そしてその睡眠時間の平均は8時間4分とのことでした。

2015年に行われたNHK国民生活時間調査によると、日本人平均睡眠時間は7時間15分ということですので、アスリートの方が約50分多いことがわかります。

まあ普通に考えて、アスリートは過酷なトレーニングや厳しい練習をしているので、体を回復させる為に睡眠を多くとることは当然だろうと思う方が大半だとは思いますが、今回はそれについて少し科学的に説明したいと思います。

 

ウィリアム・C・デメント教授の研究

『スタンフォード大学睡眠研究所』を立ち上げた睡眠研究の第一人者、ウィリアム・C・デメント教授が、「男子バスケットボール選手10人を40日間、毎日10時間睡眠を取らせたら、それがコートでのパフォーマンスにどう影響するのか?」という実験を行い、その結果、「コート反復80m走のタイムとフリースロー、3ポイントシュートの成功率を毎日記録したところ、40日後には平均で80m走のタイムは0.7秒縮まり、フリースローは0.9本、3ポイントシュートは1.4本も多く入るようになった。」という成果を得ました。

またその他にも、タブレット端末を使って図形が出るたびにボタンを押してもらうというリアクションタイムの評価でも、反応力が高まったという結果が出ました。

もちろん、選手たちの毎日の努力によってパフォーマンスが上昇した可能性もありますが、スタンフォード大学の選手はセミプロレベルの一流が集まっていますから、練習内容を変えていないのにも関わらず、ほとんどの選手が突然レベルアップするというのは考えにくく、また、その後の調査で、「10時間睡眠をやめたところ、選手たちの記録は実験開始前の水準に戻ってしまった」という結果がでており、研究チームは、「睡眠時間を増やしたことが、選手の集中力、思考力などのパフォーマンス向上をもたらした可能性が高い」と結論付けました。

実際に実験中の選手からは、「すごく調子がいい」「ゲーム運びがよくなった」という声も出ていたそうです。

 

睡眠不足の悪影響

上記の研究から、しっかりと睡眠をとることでパフォーマンスが上がるということが分かるのですが、ここからは、逆になぜ睡眠不足が良くないのか?について考えていきたいと思います。

世の中には『ショートスリーパー』という、夜の睡眠時間が極端に短くても日中の活動に支障が出ない人がいます。ホントかどうかは分かりませんが、芸人の明石家さんまさんとフランス皇帝のナポレオンさんは、だいたい3時間程度の睡眠時間だったそうです。

このお2人のように、日々の生活の中で活動時間を増やすために「睡眠時間を削る」という方法をとる方も結構多いと思いますが、当然ながら、一般の普通の人にとって、睡眠を削るということは身体の機能的に良いことではありません。あらゆるパフォーマンス発揮に悪影響を及ぼしてしまいます。

では、その悪影響とは何か?なのですが、それは「睡眠時間が少ないと、早朝及び午後にストレスホルモンであるコルチゾールの値が増加する」ということです。

コルチゾールというのはストレスホルモンの一種であり、炭水化物・脂肪・たんぱく質の代謝を制御する性質があります。そしてその性質によって、筋力の減少や記憶力・脳機能の低下、コラーゲン・免疫力の低下などの影響が出てしまうのです。

そしてその結果、「肉体的に疲労しやすくなる」「調節力が低下しミスが増える」「判断力が鈍る」「集中力がなくなる」など、必要なパフォーマンスが低下し、練習の効率が悪くなったり、試合でいいプレーができなかったり…ということに繋がってしまうのです。

これらは、アスリートにとって見過ごすことのできない悪影響です。

 

アスリートは睡眠を大切にしている

上記のような理由から、アスリートの方や普段トレーニングされている方は、睡眠時間を削ってまでトレーニングしてしまうと、せっかく頑張っているにも関わらず成果が上がらないという、辛い結果になってしまう可能性が高くなります。

昔から「寝る子は育つ」と言われるように、睡眠は身体の回復や成長のために絶対的に必要なものなのです。

トレーニングを行い、筋肉に刺激を与えると、身体を構築するためのホルモンがより多く出るのですが、睡眠はそのホルモンの分泌を促してくれます。筋肉は「トレーニングしている時」ではなく「休んでいる時」に成長するのです。

また、技術や戦術など、脳に入れた情報も、睡眠時に整理されると言われています。

このことからわかるのは、「睡眠のクオリティを上げることが自分の身体を強化するための秘訣である」ということです。

このような理由から、多くのトップアスリートの方々は睡眠を大切に考えています。

 

トップアスリートの睡眠

ゴルフ界のレジェンド、タイガーウッズ選手の睡眠時間はだいたい10時間だそうです。

陸上のウサイン・ボルトも1日10時間。バスケットボールのレブロン・ジェームズは1日12時間。世界最高峰のF1レーサー・ミハエル・シューマッハ選手は、最低12時間。オートバイレーサーのバレンティーノ・ロッシは、十分に睡眠をとった上に、レースの前に昼寝をしていたといいます。

ちょっと番外編になりますが、7月に最年少タイトル獲得者の記録を更新して話題になっている、将棋の藤井聡太棋聖は、「割と朝が弱いので、9時くらいに起きています。寝るのは(午後)11時から11時半くらいです。」と話しています。

テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーも体調管理をしっかりしています。自身の言葉によれば、「成功のカギの一つは睡眠」と述べています。彼は物事がシンプルであることを好み、「オキシジャン・マシン」や「アイスバス」などは使わない(大嫌い)そうです。それよりシンプルな温かいシャワーや普通のストレッチを好み、何よりたくさん寝ること、特に大会中にはたっぷり睡眠をとることが大好きだということです。

彼は以前「私は1日に11時間か12時間は寝たいんだ。そのぐらい寝ないと怪我をする。」と語っており、夜10時間寝て、昼間に2時間ほど昼寝をするそうです。

 

錦織圭 × 松岡修造 対談

以前、錦織圭選手は松岡修造氏との対談で、自身の睡眠時間について「寝るときはしっかり寝ますね。前は12時間、13時間寝てましたけど、年齢とともに今はちょっと減ってきました。そこまでは寝れなくなってきました。でも基本10時間くらいは寝たい人です。」としっかり睡眠を取っていることを明かしました。

松岡さんも「ジュニア合宿中も睡眠がいかに大事かということをジュニア達に伝えています。『eat to win』ってありますよね。食べて勝つというのがありますが、今は『sleep to win』というか、寝るということが正直アスリートにとって一番大事な休める時間ですから。」と睡眠の重要性を強調していましたが、「ただ12時間はアスリートの中では世界一じゃないですか?」と、錦織の睡眠時間について面白おかしく突っ込んでいました。

錦織は「昔から趣味みたいなところがあって、寝るのが一番好きだったので、またどこにいても寝れるタイプの人間で、車だったり飛行機でもすぐ眠りに落ちてしまいます。寝るのが何よりも自分の身体を回復させてくれる人間の持っている力というか。もちろん食べることだったり、治療することだったり色々ありますけれど、寝てこそ身体がしっかり回復してくれるので、自分の好きなことでもあるけど、アスリートにとってすごく大事なことだと思います」と睡眠の重要性を語りました。

また、「寝りにつくまでが大変だったりする人もいると思いますが、その時はどうしましょう?」という松岡さんの質問には、「僕基本寝れないときは、自分でしりとりをして、いつの間にか寝てるパターンが多いですね。自分でルールを決めて、3文字なり4文字なり縛ってしりとりしたり…」と独自の睡眠ルーティーンがあることも明かしていました。

 

名言集

デメント教授の実験の影響もあり、睡眠に関する理解はアメリカやカナダの方が進んでいるようです。MLBヤンキースのキャンプでは、球団が選手向けに「睡眠をしっかり取りましょう」という教材ビデオを作成して見せているそうです。日本のスポーツ界でも、徐々に関心が高まってきているようですが、現状、日本人は睡眠に関して、様々な統計において「世界一を争うほど水準が低い」というデータが出ているので、アスリートの方に限らず、他の皆さんも、いろんな場面でのパフォーマンを高めるために、睡眠について真面目に考えてみてはどうでしょうか。

それでは最後に名言集です。

 

「睡眠を削って頑張るのを良しとする風潮が日本中を覆っている。実に嘆かわしい。」

水木しげる(漫画家・代表作『ゲゲゲの鬼太郎』)

 

「精神的なスランプからは、なかなか抜け出すことができない。根本的な原因は、食事や睡眠といった基本的なことにあるのに、それ以外のところから原因を探してしまうからだ。」

落合博満