全仏覇者イガ・シフィオンテクが語る心理学の重要性

 

今回のテーマは 『全仏覇者イガ・シフィオンテクが語る心理学の重要性』 です。

 

シフィオンテクの快挙

ポーランド出身の19歳、世界ランク54位だったイガ・シフィオンテクは、2020年10月に行われた4大大会の1つ「全仏オープン」において、ノーシードからの優勝という快挙を成し遂げました。

パリでの7試合でひとつもセットを落とさなかったシフィオンテクは、2007年のジュスティーヌ・エナン以来の「全試合ストレート勝利を遂げた女子選手」となりました。

また、1997年のイバ・マヨーリ以来となる「10代の女子シングルス優勝者」、そして「最もランキングの低い女子シングルス優勝者」、更には「4大大会のシングルスで優勝した初のポーランド人」という数々の記録を打ち立てました。

彼女はプロ入り後、ツアーレベルの大会で優勝したことは1度もありませんでしたが、初優勝がいきなりビッグタイトルとなりました。

 

会見で語られた言葉

シフィオンテクは試合後の会見で、「4大大会で勝ち上がり、様々なプレッシャーやストレスがあったと思うが、それをどうやって乗り越えることができたのか?」と記者の質問され、次のように応えました。

「グランドスラムの決勝でプレーしている時は、誰だってストレスを感じると思います。でもこれまでのラウンドでやってきたことは今日も全てやりました。昨日(女子ダブルス準決勝で敗退)のように、勝っても負けても気にしないと思うようにしていました。このように、自分への期待値を低く抑えることが一番の鍵だったと思います。」

「あまりストレスを感じたくなかったから、『気にしない』と自分に言い聞かせて、それを信じるようにしていました。最後の方はむしろその瞬間を楽しんでいたと思います。」

シフィオンテクは準決勝後の記者会見でも、「勝っても負けても気にしない、自分のベストなテニスをするだけです。決勝進出というだけでも素晴らしい結果なので、私にはまったくプレッシャーはありません。」と語っていましたが、正に❝有言実行❞となりました。

その他にも、「試合中に心理学者が教えてくれたことをすべて使っています。例えば、コートチェンジでベンチに座っている間には、目を閉じてゆっくりと呼吸をし、瞑想しています。」とスポーツ心理学者の存在を明かしました。

コートに出る直前には、その心理学者に「この2週間、素晴らしいプレーをしている。今日もルーティンを守りなさい。」「勝ち負けは関係ない。良いパフォーマンスを出すことに集中しなさい。」と言われていたそうです。

また、シフィオンテクは「私は、今のテニスにおいて、精神的な強さが最も重要なことだと信じています。精神面がしっかりしていれば、最高レベルのプレーができます。ビッグになれるのは精神的にタフでプレッシャーにうまく対処できる人だと思います。」と語りました。

 

快進撃の理由の1つ「メンタルトレーニング」

上記の発言からも分かるように、シフィオンテクは、ジムでのトレーニングやコートでの練習と同じくらい、「メンタルトレーニング」を重要視しているそうです。そしてそのことが全仏オープンで優勝を遂げるための大きな助けとなったといいます。

シフィオンテクは過去2年間、上記の会見コメントにも登場したスポーツ心理学者であるダリア氏の指導を受けており、その成果について次のように語っています。

「ダリアは私のことをよく理解してくれていて、私たちはたくさん話をします。彼女は私を賢くしてくれました。このスポーツについてより深く理解できたし、心理学についての知識が増えました。自分の気持ちをより理解できるようになり、言葉にすることもできるようになりました。試合中の苦しい場面でどう考えるべきなのかも分かってきました。」

メンタルトレーニングについては、「大きな役割があると思います。精神的に準備ができていて、プレッシャーやストレスに対処する準備ができているかどうかで大きな違いが出ます。だから1回戦で負ける時もあれば、何回か勝ち進むこともあります。今後の目標は、毎試合しっかり準備をし、毎試合自分の持っている実力を安定的に発揮できるようにすることです。」と重要性と今後の目標を語りました。

 

Low expectation(低い期待)

シフィオンテクが全仏優勝後の会見で語った「自分への期待値を低く抑える ❝Low expectation❞ 」 は、ダリアさんとの話し合いから学んだそうです。

ダリアさん曰く「ストレスには三つの段階ある。最初は思考の段階、次に感情の段階、そして身体反応の段階。どれほど日々の身体的な訓練を積んでも、メンタルから来る身体反応はプレッシャーの大きさ次第で痙攣や筋肉の硬直、呼吸の乱れなど、思いもよらない形で出てしまう可能性があるから、思考の段階で処理できればベターである。」という考えです。

プレッシャーを取り除くためのメンタルトレーニングは、日頃の練習の中に様々な形で取り入れられているようですが、 ❝Low expectation”❞ の中には「自分への期待値を下げること、つまり『自分は絶対に出来るはずだ』という考えを思考から追い出すこと」だけでなく、「今戦っている試合のみに集中する」「今リターンしようとしているボールのみに集中する」「結果のことを考えず、ただベストを尽くす」など、様々な考え方が含まれているそうです。

❝良い結果を出そうと考えないことで、良い結果を出そうとする❞ という心理学的戦略です。

 

2度目のツアー優勝後のコメント

その後、シフィオンテクは2021年2月、世界ランク15位となって挑んだアデレード国際(オーストラリア/WTA500)で全仏オープン以来2度目のツアー優勝を果たしました。

シフィオンテクは会見で、「今回の勝利のカギは、いつも通りのルーティーンを貫いたこと。毎ポイント同じことをして、細かいところまで気を使っていた。今週の自分のパフォーマンスにはとても満足している。毎試合ごとにメンタル的にも強くなっていった。全てが合わさった。これこそが今までやってきた努力の結果だと思っている。このレベルをシーズンでずっと続けることは難しいかもしれないけれど、この1週間は高いレベルをキープすることができた。」と満足そうに語りました。

 

シフィオンテクの「心理学」についての考え

心理学を学び成長を続けるシフィオンテクは、「心理学は他の人にとっても役に立つものだ」と考えています。最後にそのシフィオンテクの言葉を紹介します。

「心理学について、『 ❝問題を抱えている人❞ のためにあるもの』と考えるべきではありません。心理学は『 ❝成長したいと考えている人❞ のためにあるもの』と私は考えています。」

「心理学的なトレーニングはすごく複雑で奥深いですので、絶えず学びを続けていくつもりです。」