今日のテーマは『 トッププロでも ❝雑念❞ でパフォーマンスが低下する 』です。
トッププロ選手というと、心・技・体、全てにおいて突出していて、欠点がほぼないようにみえます。
我々アマチュアからみたら、ほぼ完璧なスキル、しなやかで強靭なフィジカル、何時間も集中力を維持できる驚異のメンタルを同時に備えている、ある意味スーパーマン(ウルトラマン⁉)的な存在です。
しかし、そんなスーパーマンのようなトッププロでさえ、❝雑念❞ が脳裏をよぎった時には、自分のプレーができなくなってしまうことがあるのです。
今回は、そのような経験を語ってくれている3人のトッププロ選手の話を紹介します。
アンディー・マレー選手の話
まずは、グランドスラム3回優勝、ロンドン五輪・リオ五輪でシングルス2連覇を果たしている、元世界ランク1位のアンディー・マレー選手。
マレー選手は2017年の前半に不調に陥っていましたが、その時の状態を次のようにコメントしています。
『試合中に、どのショットを打てばいいのかわからなくなることが多々あった。ラリー戦の途中で焦ってしまい、判断を間違ってしまうことも多かった。今思えば、そのような時は色々と考え過ぎていた。物事が上手くいかない時は、コート上で技術的なことが気になってしまい、あれこれ考えてしまうものだ。しかし、それが上手くいったためしはない。』
体の動きを気にしてしまうと(インターナルフォーカスすると)、マレー選手でさえもパフォーマンスを落としてしまうということがわかります( ゚Д゚)。
アナ・イワノビッチ選手の話
次に、2008年の全仏オープン女子シングルス優勝、元世界ランク1位のアナ・イワノビッチ選手。
イワノビッチ選手は、試合中に急にサーブの調子が乱れ、立て続けにダブルフォルトを犯してしまう時期がありましたが、そんな状態に陥ってしまった時の心理状態を次のように表現しています。
『例えば階段を降りる時、まずは片足を上げて着地して重心を移動して、そしてもう片方の足を上げて・・・などど考えていたら転げ落ちてしまうでしょ?サーブが入らなくなった時は、そんな感覚になってしまう。』
これは、「普段は無意識に上手くこなしていることでも、意識した瞬間にスムーズさを欠いて上手くできなくなってしまう…」という、我々アマチュアの世界でよく聞くパターンです。
世界ランク1位を経験している選手でも、こんな状況になってしまうことがあるのです( ゚Д゚)。
ラファエル・ナダル選手の話
そして最後に、グランドスラム優勝回数歴代2位の19回、史上2人目のキャリアゴールデンスラムを史上最年少の24歳3ヵ月で達成したクレーキング、ラファエル・ナダル選手。
ナダル選手は、ケガから復帰したものの思うような結果を残せていなかった2015年、試合に負けた後の会見で、次のように語りました。
『いい状態の時は、どうやってフォアハンドを打っているかなど考えることなく、どのコースにどんなショットを打つかに集中できる。しかし今は、どうやってフォアハンドを打つのか?どうすればミスせずに打ち返せるか?ということばかり考えてしまう。これでは最高の選手たちと競い合うことは不可能だ。』
この時のナダル選手は29歳。もう10年以上も世界のトップに君臨する経験豊富なレジェンドベテラン選手です。そんなレジェンドですら、上手くいっていない時には ❝打ち方❞ を気にして(インターナルフォーカス)パフォーマンスを落とし、悪循環に陥っていたようなのです。
ナダル選手の得意ショットと言えば ❝フォアの強烈なトップスピン❞ というイメージがありますが、そのレジェンドの得意ショットですら、❝雑念❞ により崩れてしまうことがあるのです。驚きです( ゚Д゚)。
ナダル選手のスランプ脱出方法
ということで、今回は「 ❝雑念❞ でパフォーマンス低下を経験したトップ選手の話」を紹介しましたが、最後に、ナダル選手がいかにスランプを脱したか?という話で締めくくりたいと思います。
ナダル選手は2015年のスランプの後、2016年クレーコートシーズンで一時復調気配を見せるも、手首のケガで全仏オープン棄権、ウィンブルドンも出場できず、リオ五輪に出場するべく回復を急いで無理をし、五輪には出場したもののケガが悪化。その後のシーズンを休養せざるを得ない状況になりました。
しかし、2017年からツアーに復帰すると、いきなり全豪オープン準優勝。全仏オープンでは1セットも失うことなく優勝。その後全米オープンまでも優勝し、完全復活を遂げることとなりました。
この完全復活の最大の理由として、ナダル選手自身とコーチである元世界ランク1位のカルロス・モヤ氏が挙げているのが「フォアハンドストロークの進化」でした。
モヤコーチは、ナダル選手がどのようにして得意のフォアハンドストロークを取り戻したのかについて、次のように語っています。
「最も重要なことは反復練習だ。2016年のオフシーズンは、フォアハンドストロークの練習に多くの時間を費やした。まずは、ボールを強く打つための体の使い方・体の動きが、きちんとスイングスピードに繋がるように、細かくチェックした。そして何度も打ち込んだ。」
「そして次のステップは実践練習だ。試合を想定した様々なパターンの中で、繰り返しフォアハンドを打ち込んでいった。」
「そして最後のステップが試合をすることだ。練習で積み上げてきたことを試合の中で実践し、それが上手くいって勝利を重ねれば、おのずと自信を取り戻すことができる。」
世界のトップ選手でも、このように一般の選手が行っているようなステップを踏んで、進化しているのです( ゚Д゚)。