今日のテーマは 『 ミラーニューロン(前編)』 です。
ミラーニューロンとは
「ミラーニューロン」とは、鏡を見ているかのように、他の人の行動を見て、自分も同じ行動をとっているかのように反応をする、高等動物の脳内にある神経細胞の1つです。
イタリアのパルマ大学の神経科学者、ジャコモ・リッツォラティという人が、腕の運動に関する実験をサルを使って行っていた際に、偶然発見したそうです。
この細胞には、自分の近くにいる人、自分がよく見る人を自然にコピーするという機能があります。他の人がする言動を見たり聞いたりする時に活性化し、それを脳内で鏡のように映し出し、自分もそれを再現しようとします。(ですので、「ものまね細胞」とも言われます。)
例えば、「誰かが泣いているのを見て、もらい泣きしてしまった…。」とか、「誰かが爆笑しているのを見ると、特に面白い訳でもないのに、つい一緒に笑ってしまった…。」とか、「隣にいる人のあくびがうつった…。」とか、「スポーツの大熱戦を見て興奮した…。」とか、「映画を見てハラハラドキドキした…。」とか。これらはミラーニューロンの働きである可能性が高いです。
また、「親は子の鏡」とか、「いつも一緒にいる友達と、しゃべり方や行動パターンが似る」というのも、ミラーニューロン効果の積み重ねによって起こる現象と言えるでしょう。
大企業家の言葉
一流企業のコンサルタントとして活動し、31歳で億万長者となる大成功をおさめ、世界の成功者たちに大きな影響を与えていると言われている、アメリカの起業家、ジム・ローン氏は、次のように言っています。
「あなたは最も多くの時間を共に過ごしている5人の平均である。」
「朱に交われば赤くなる」と言われるように、生活や性格、価値観は「周りにいる人」によって良くも悪くも大きな影響を受けます。人は無意識のうちに周囲の人から影響を受けて、自分自身を形成していくものです。ミラーニューロンの機能が働いているからです。
そして、自分の意思でこのミラーニューロンの機能を停止することはできません。自分の意思で心臓の動きを止められないのと同じです。ということは、私達は周りの人の影響を防ぐことができないのです。
つまり、「 ❝人間関係の環境デザイン❞ は、かなり重要」ということになります。
具体的な例
具体的には、「誰と付き合うか」「誰と一緒にいるか」「誰の意見を聞くか」が大事ということです。
悪い例でいうと・・・
・ネガティブな発言ばかりする人(だるい、しんどい、めんどくさい、無理、できない、などの口癖や、悪口・愚痴・批判・批評・・・etc)と一緒にいると、自分も自然とそうなってしまう。
・目先の損得勘定ばかり気にしている人と一緒にいると、自分も自然と「短期目線」「短期的思考」になってしまう。
・口ばかり達者で行動が伴っていない人と一緒にいると、自分も自然と「口だけ人間」になってしまう。
・すぐに落ち込んだり凹んだりする人と一緒にいると、自分も自然と「ネガティブリアクション」するようになってくる。
・努力しない人、頑張らない人に囲まれていると、自然と自分の「頑張りレベル」が落ちてくる。
・・・・・・・・・・etc。
という感じです。
両方とも大切
もちろん、「人間関係が大事と言われても、そう簡単には変えられない」という人もたくさんいるとは思いますが、❝ミラーニューロン効果❞ をプラスに使うためには、何かしら良い方法を考えていく必要があると思います。
すぐに変えることができないとしても、中長期的に考えて少しづつでも行動していった方がいいと思います。
もちろん、今の環境が良い環境なのであれば、それを継続すれば良いですし、すぐにより良い環境を求めて動ける人は、すぐに環境改善すると良いと思います。
ただ、今回の話についても、「環境のせいにしてはいけない」「人のせいにしてはいけない」という意見があると思いますし、ある側面から見れば、確かにその通りだと思ます。
確かに、自分自身の意識としては「私は悪い影響を受けない」「俺は自分の道を行く」「全ては自己責任」というマインドセットが必要です。「自分の力で悪い影響を断ち切る!」という意志を持つことも大事なことです。
しかし、一方で「自分がよく見る人を自然に無意識にコピーしてしまう」という脳機能を持っている以上、「意志力で周りからの悪い影響を完全に遮る」ことはかなり難しいことです。ほぼ不可能と言ってもいいかもしれません。(もちろん、影響を受ける度合いは人によって違います。影響を受けやすい人もいれば、あまり影響を受けない人もいます。)
要するに、「環境のせいにしてはいけない」「人のせいにしてはいけない」という信念を持つことも、「環境デザイン」についてしっかり考えることも、両方とも大事なのです。
(つづく)