記憶力を高める方法

 

今日のテーマは 『記憶力を高める方法』 です。

 

脳科学の分野では、記憶 は一般的に「短期記憶」と「長期記憶」に分けられます。

「短期記憶」は数時間から数日単位で消えていく一時的な記憶です。「今日の御飯は何を食べたかな?」ということを覚えているような類の記憶です。

「短期記憶」を処理するのは脳の中にある ❝海馬(※)❞ という部位で、フィルターのような役割をしています。そしてこのフィルターが記憶が次々と入ってくることで詰まってしまうので、「短期記憶」の中から、捨てるべきか or「長期記憶」として残しておくべきか、を ❝海馬❞ が振り分けます。

(※ ❝海馬❞ とは記憶の要となる脳の部位。ここで五感を通して得られた情報が「短期記憶」として処理され、その内容により、「長期記憶」として残すべきかどうかの振り分けが行われる)

「長期記憶」に振り分けられた場合は、前頭葉や側頭葉という ❝倉庫❞ にしまわれ、長く記憶されていくというメカニズムになっていますが、「短期記憶」に振り分けられた場合は、❝倉庫❞ にしまわれないので、だんだんと忘れていきます。

(ちなみに前回の投稿「エビングハウスの忘却曲線」は、「短期記憶」を観察した内容です。「長期記憶」ならば1日や1週間経過してもちゃんと覚えているので、そもそも覚え直す必要はなく、忘却曲線のグラフにあらわれているような節約率にはなりません。)

 

では、どうすれば「短期記憶」ではなく、「長期記憶」の ❝倉庫❞ に蓄積することができるのか?ということですが、そのためには、❝海馬❞ を上手に使う必要があります。

先程も説明しましたが、❝海馬❞ は脳が受け取った情報を「長期記憶」に移して保管するか、要らないと判断して忘れるかを決める仕分け人としての重要な役割を持っています。

そして、❝海馬❞ がその情報に対して、重要かどうかを判断する基準が次の3つです。

① 生きていくために必要なもの

② 印象が強烈なもの

③ 反復性

 

そもそも動物の脳は ❝生存すること❞ を最重要と考えるので、食べ物や危険に関係する情報が、何よりも優先されます。ですので、①と②は本能的というか、当たり前のこととも言えます。

しかし、❝生存すること❞ に関わらない情報でも、❝海馬❞ に「これは生きるために必要な情報に違いない」と勘違いさせる方法があります。

それが、❝③反復性❞ です。これこそが「❝海馬❞ を上手に使う」方法です。

❝海馬❞ は何回も同じ情報が入ってくると「こんなに頻繁に入ってくる情報なんだから重要に違いない」と思って「長期記憶」の ❝倉庫❞ に移してくれるようになります。繰り返すことで ❝海馬❞ に重要な情報と思わせるのです。

そもそも、脳は「覚える」ことよりも「覚えない」ことを得意としているので、たとえすぐに覚えられなくても、それは当然のことであり、凹む必要は全くありません。

地道に ❝繰り返し❞ を行えば、そのうちに脳は記憶にとどめてくれます。❝繰り返し(反復練習)❞ を行えば、情報は記憶として定着するのです。

 

「エビングハウスの忘却曲線」と合わせて「脳の海馬がコントロールしている記憶の仕組み」を理解すれば、「❝反復練習❞ ❝繰り返し❞ ❝継続❞ ❝積み重ね❞」 が学びの王道であることが分かります。

❝記憶力が良い人❞ と ❝記憶力が悪い人❞ との違いは、結局のところ、脳の使い方が上手いのか上手くないのか、という要素が大きいのです。脳の仕組み・構造はすべての人に共通ですから、やはり、❝地道な反復練習を継続できる人❞ が成果を出すことができるのです。

 

最後にもうひとつ、食事のタイミングに関する話で終わりにしたいと思います。

テニスに打ち込んでいるジュニアの皆さんは、恐らく学校が終わってから、食事の前に、部活に参加したり、テニスクラブでレッスンを受けたりして、練習後に家に帰って食事をするという場合が多いと思います。

実は、この 「テニス ⇒ 食事」 という順番がすごく良いのです。

それはなぜかというと、「お腹がすいているときの方が記憶力が高まる」ということが科学的に証明されているからです。専門的な話では、「空腹時にはグレリンというホルモンが胃から放出され、それが血管を通って海馬に届き、長期増強(LPT)を起こりやすくさせる」のだそうです。(長期増強(LPT) =神経回路の伝達効率が上昇する現象)

ちなみに、「テニス ⇒ 食事」 という順番がすごく良いという理由はもう1つあって、それは「運動後すぐに栄養補給をすることで、グリコーゲンやアミノ酸が筋肉合成に使われるため、栄養不足から起こる筋肉の分解を止めることにつながり、また、グリコーゲンの貯蔵を速やかに行うことで疲労回復にも効果的」ということです。

運動後30分以内にタンパク質を摂ると、それがほとんど筋肉を合成するほうに使われるらしく、❝筋肉のためのゴールデンタイム❞ と言われています。そして、そこから1時間半後くらいまでは、たんぱく質が筋肉に吸収しやすくなっているそうです。