「怒って育てる指導」の注意点

 

今日のテーマは 『「怒って育てる指導」の注意点 』 です。

 

厳しい指導

前回は「今後は厳しい指導者が少なくなっていくことが予想されます」という話をしたのですが、一昔前は、スポーツ推薦とかで能力ある選手を集めているわけでもないのに、厳しい指導で結果を出し続ける名物監督みたいな方が結構いらっしゃいました。高校野球や、高校サッカーや、高校ラグビーなど、毎年のように強い常連校もありました。

私は子供の頃、高校野球(甲子園)が好きで、よく見ていたのですが、池田高校の蔦監督、簑島高校の尾藤監督、PL学園の中村監督などの名物監督は今でも覚えています。

蔦監督に関しては、私が通っていた学校に講演会で来てくれたことがあったり、特集番組を見たことがあったりで、色々と話を聞いたのですが、とてつもなく厳しい感じだったと記憶しています。

ですので、やはり ❝厳しい指導❞ というのは、選手の能力を向上させるための1つの方法であることは間違いありません。

精神的に未熟な子供に対しては、厳しく声をかけて意欲を高めたり、怒鳴り散らしながら、お尻を叩きながら導いていくやり方も、効果があると思います。「マナーやルールを強制力をもって植え付ける」ということも、よくある話です。

しかし、このような ❝強制的な厳しい指導❞ には、当然マイナスの面もあります。今日はそちら側の話です。

 

❝逃避脳❞ が育ってしまう

人には「自分を守りたい」という ❝自己防衛本能❞ があります。

ですので、毎日毎日何回も何回も怒られていると、この ❝自己防衛本能❞ が作用し、自分を守るために、その怒ってくる人の話を何とか聞かないようにしようとします。聞き流したり、聞くふりをしたり、無視したりすることになります。

そしてそんな状態が続くと、だんだんと「人の話を真面目に聞いているように見えて、実はまともには聞いていない」という態度が習慣化されてしまいます。

そしてその習慣が、「困難から逃げてしまう脳= ❝逃避脳❞ 」を育てる結果となってしまうのです。

❝逃避脳❞ が育ってしまうと、困難から逃げようとしてしまうので、

・人の話を真面目に聞かない
・嘘をつく、言い訳をする
・考えることをしない(頭を使うのは重労働だから)
・継続できない、集中が続かない
・すぐに「面倒くさい」と思ってしまう

などの行動をとることになり、❝自分自身の成長❞ から逆方向を向いて進むことになってしまうのです。

これが、❝強制的な厳しい指導❞ のデメリットです(デメリットの1つです)。

 

教育的意義

本来スポーツは、

「ベストを尽くしてやるべきことをやり、それを積み重ねる努力によって、自分自身を向上させていく習慣を身に着けていく」

「困難を乗り越えて掴む勝利の幸福感・充実感・達成感を味わうことで、目標達成の素晴らしさを学び、目標達成能力向上につなげていく」

「ライバルと競い合う中で、自分を成長させる機会を与えてくれたそのライバルをリスペクトできる人間性を育む」

などの教育的意義を持っています。

私個人的には ❝厳しい指導❞ も必要と思っているのですが、だからこそより一層、このような教育的意義を忘れないようにしないといけないと思っています。

口で言う程簡単な事ではありませんが、指導者側も生徒側も、このような知識を持ち、お互いにコミュニケーションを取りながら、日々の練習に取り組んでいくことが大切です。

 

名言集

では最後に名言集です。

 

「怒りにまかせ、怒気怒声を発すれば、あなたの徳望を失うことになる。」

五代友厚 (江戸時代生まれの薩摩藩士、明治時代は実業家として大阪経済界の重鎮の1人となる)

 

「心の中で怒りながら人に理屈を説いてはいけない。」

良寛 (江戸時代後期の曹洞宗の僧侶、歌人、書家)

 

「『怒る』のではなく『叱る』ことが大切。具体的にできていないことを指摘するのが『叱る』です。それができず、ただ感情的に怒っている上司が世の中には多い。」

小山昇 (ダスキンのフランチャイズ事業を行う株式会社武蔵野の代表取締役社長)

 

「叱るときはアフターケアが重要です。まずは一旦は落ち込ませる、叩きのめす。それから今度は戻してやる。その繰り返しです。」

永守重信 (日本電産創業者)

 

「上司として『こうすべきである』という信念や、『部下に成長してほしい』という思いがあるから、叱ることができる。信念と愛情を持って、一生懸命指導し、説得すれば、必ず通じる。」

「最近は、上司が部下を叱るのを避ける風潮がある。しかし、叱ることができないのは、信念も思いも希薄な証拠である。」

稲盛和夫 (京セラ、KDDI創業者、日本航空名誉会長)

 

「私は、選手一人ひとりの人生をあずかっているという気持ちで指導してきました。上司の方あるいは経営者であっても、目の前の部下や社員の人生をあずかっているという気持ちで向き合ってみてはいかがでしょうか。そうすれば、人間と人間の付き合いができます。部下を叱る時でも、その人を少しでもよくしたい、成長させたいという愛情を含んだ叱り方になると思います。」

井村雅代 (日本のアーティスティックスイミング界の基礎を築いた代表的指導者・「日本シンクロ界の母」と言われる)

 

「もし試合でいいパフォーマンスを出せずに落ち込んでいる選手に、「おまえ、あのプレーは何なんだ」といきなりダメ出ししてしまうと、その瞬間にどんなアドバイスも受け付けなくなる。でも、次の日の朝一番に、「昨日の試合のことを振り返ってみろ」と声を掛けたら、「ああ、監督は昨日の俺のことを気にしてくれていたんだ」と思うもの。そうなれば、自分からいろいろと話してくれるようになりますよ。」

手倉森誠 (元サッカー選手、 2018年~V・ファーレン長崎の監督)

 

「『押し付けはいけない』という教師や親がいます。『子供の自主性を育むために強制ではなく支援すべきだ』というのです。でも、不良だった16歳の自分が『支援』なんてされていたら、もっとひどいことになったと思います。ぐれている子供は『そんなことをしてはダメだ!』と叱ってもらいたいのです。」

義家弘介(元教師・「ヤンキー先生」として多くの著書あり、現自民党所属の衆議院議員)