逆転負けパターン②「勝ちビビり」

 

今日のテーマは 『 逆転負けパターン②「勝ちビビり」』 です。

 

「油断」よりも多くみかける「勝ちビビり」

今回も、私が今まで色んな試合をみてきた中で、結構目にすることが多かった「逆転負けパターン」です。

私の記憶が確かならば、前回の「油断」よりも、この「勝ちビビり」の状況に陥っている選手を、よりたくさん見てきました。

これは、「勝ちが見えてくると、リードしているにも関わらず、守りに入ってしまう」という現象のことを指します。

観戦している親御さんの中には、「なんで勝ってるのにそんなことになるんだ!」とか、「うちの子は気が弱い!」とか言う人もいますし、先生とかコーチでも、「勝っているんだから思い切ってやればいいんだ!」とか言っているのを見たことがあります。

もちろん、その親御さんや先生やコーチ自身が、そもそもメンタルが強い人(メンタル熟練者)であれば、勝ちビビってる選手をみて、「一体何をやってるんだ!」という気持ちになっても仕方がありません。

しかし、❝メンタル熟練者❞ ではない人の場合、そんな簡単な問題ではないのです。

私が見ていた選手だけでなく、私自身も、勝ちビビり経験は結構多いです。

 

プロスペクト理論

では、どうしてそうなってしまうのか?

もちろん、原因は1つではなく複数あるわけですが、実はこれに関しても、原因の1つは脳の仕組みから説明できます。

「人は新しいものを手にする時に得られるメリットよりも、所有しているものを失うデメリットの方に注意が働き、できる限り損失を避けようという傾向がある」

という行動心理を表す理論があり、これを ❝プロスペクト理論❞ と言います。

そしてその割合は、得られる喜びよりも、失う痛みの方が何倍も大きく感じると言われています。

要するに、失う痛みを避けようとする ❝損失回避バイアス❞ という心理が働いてしまうのが普通の人なのです。

例えば、試合の時で言うと、3-0でリード、4-1でリード、5-2でリードという場面は、「3ゲームの貯金がある」ということなので、「この貯金を失いたくない!」という ❝損失回避バイアス❞ が働き、リードを何とかして守ろうと、消極的になってしまうということです。

「ブレークポイントやセットポイントやマッチポイントがなかなかとれない…」という経験がある人も多いと思いますが、これも ❝損失回避バイアス❞ の影響を受けている可能性があるでしょう。

 

「勝ちビビり」しないために

ですので、これを防ぐには、「リードしている」とか「ブレークポイントだ」とか「マッチポイントだ」とか、そのような意識をなるべく持たないようにする必要があります。

もちろん、現状把握のためにゲームカウントやポイントを確認するのは当たり前ですが、「リードしている」という意識を必要以上に持ってしまうと、 ❝損失回避バイアス❞ が働いてしまいますので、たとえ、一瞬「リードしている」と意識してしまったとしても、その意識を何らかの方法で「取り除く」か、「そらす」か、「忘れる」か、しないといけません。

それが実現できるのであれば、方法は何でも良いわけですが、「どうしたらいいのかわからない…」という人にお勧めするのは、「ボールだけに意識を集中させる」という方法です。

「人間の脳は1つのことしか考えられない」という性質を利用して、「ボールに意識を集中する」ことにより、それ以外の雑念(いらない意識)を排除しよう…というアプローチです。

アメリカの心理学者ミッシェル博士は、

「意志力を高めるためには、誘惑から自分の気持ちを他に向けることで、誘惑を断ち切るかどうかにかかっている」

とおっしゃっていますが、これを今回の話に当てはめて、

「集中力を高めるためには、雑念から自分の気持ちを他(ボール)に向けることで、雑念を断ち切るかどうかにかかっている」

と言い替えることができると思います。

「雑念を断ち切るスキル向上」のために、是非「ボールに集中する練習」を日々の練習に取り入れてみて下さい。

ただ、当然ながら、ある程度実践できるようになるまでには時間がかかりますので、短期目線ではなく、中期目線を持つことが大切です。

 

名言集

それでは最後に名言集です。

 

「成功する人に共通しているのは、ひたすらひとつの事に集中しているという点である。彼らは自分にとって一番重要なことだけに力を集中し、それが終わるまで他の事には一切手を出さない。」

ピーター・ドラッカー (オーストリア人の経営学者・「現代経営学」「マネジメント」(management) の発明者)

 

「心が無の状態であれば、何が起こっても対応できる。未熟者の心の中には多くの雑念がある。」

フィル・ジャクソン (NBA殿堂コーチ・通算勝率はリーグ歴代最高で、禅導師を意味する「ゼン・マスター」と呼ばれる)

 

「何も思うな、余計なことは考えるなよ。明日は明日。今日は今日。今、この瞬間に最善を尽くせばそれでいい。」

武田豊 (元新日鉄代表取締役会長・元経団連副会長)

 

「雑念を払って、球を打つことだけに精神を集中する。疲れる。疲れてもなお打つ。没入し切った時、球が見えてきたんですよ。」

川上哲治 (元巨人軍監督・王、長嶋らを率いてプロ野球史上唯一のV9達成。現役時代は、その卓越した打撃技術から「打撃の神様」と言われた。)

 

「雑念をやめ静かなときも動くときも心を同じにするのがよい。何かひとつだけのことを考えるならば雑念が自然となくなり、素早く実行できる。」

高杉晋作 (幕末の長州藩士、奇兵隊創設)