文脈干渉効果②(練習編)

 

今日のテーマは 『文脈干渉効果②(練習編)』 です。

 

前回、「技術向上のために行う反復練習が、その時の状況と結びつけられてしまうことで、状況が変わると実行できなくなる(=文脈干渉効果)」という話をしました。

そして、この仕組みを回避するためには、❝ランダム❞ をテーマに行動して、技術と状況の切り離しに成功すれば、状況(場所)が変わっても、習得したことを無理なく実行できる可能性を上げることができます…という話でした。

今回は、このことをふまえ、「どのような練習をすれば良いのか?」について話していきたいと思います。

 

まず、練習方法を3つ紹介します。

それは、❝ブロック練習❞ ❝シリアル練習❞ ❝ランダム練習❞ です。

テニスの練習の例で言うと、「フォアを10球打ってから、その後バックを10球打つ」というのが ❝ブロック練習❞ 、「フォアとバックを交互に20球打つ」というのが ❝シリアル練習❞ 、「無作為に飛んでくるボールを自由に20球打つ」というのが ❝ランダム練習❞ です。

❝ブロック練習❞ や ❝シリアル練習❞ は、スクールレッスンの球出し練習でよく見かけます。基本的な練習をする時によく使われます。

対して ❝ランダム練習❞ は、より実践的な練習方法として使われます。

 

では、どの練習方法が良いのか?ということで、ここが今回の肝なわけですが、これまでの研究結果では、次のように説明されています。

「技能習得時におけるパフォーマンスは、❝ブロック練習❞ において最も高くなり、❝シリアル練習❞ や ❝ランダム練習❞ においては、複数の技能を混在させて練習するため、練習中の失敗は、❝ブロック練習❞ に比べて増加する。しかし、保持テスト(※1)や転移テスト(※2)においては結果が逆転し、❝シリアル練習❞ や ❝ランダム練習❞ を行った方が優れた保持や転移のパフォーマンスを導く」

(※1 保持テスト・・翌日以降も技術が身についているかどうかを見るテスト)

(※2 転移テスト・・練習したスキルを応用できるかどうかを見るテスト)

 

❝ブロック練習❞ は、簡単な状況で行うので、ミスをする確率が下がり、実際、技能習得段階では上手くなっていくことを実感しやすいです。

しかし、保持テストや転移テストを行ってみると、❝ブロック練習❞ によって身につけていた技術パフォーマンスがガクッと落ちて、うまく身についていなかった…という結果になります。

かたや ❝ランダム練習❞ においては、技能習得段階では ❝ブロック練習❞ ほど技術パフォーマンスが上がりませんが、保持テストや転移テストでは練習で身につけた技術がある程度発揮できており、試合に役立つ練習になっている…という結果が出ているのです。

 

これ正に、冒頭で説明したとおりの(※)、❝文脈干渉効果❞ です。

(※)『「技術向上のために行う反復練習が、その時の状況と結びつけられてしまうことで、状況が変わると実行できなくなる」「この仕組みを回避するためには、❝ランダム❞ をテーマに行動して、技術と状況の切り離しに成功すれば、状況(場所)が変わっても、習得したことを無理なく実行できる可能性を上げることができる」』

 

ということで、この3つの練習方法の有効性については、

ブロック練習 < シリアル練習 < ランダム練習

という図式が成り立ちます。

つまり、❝試合に役立つ練習❞ を考えるならば、❝保持❞ や ❝転移❞ を促進する  ❝シリアル練習❞ や ❝ランダム練習❝ を選択するべきであると言えるのです。

 

ただ、❝文脈干渉効果❞ は、練習する技能がある程度身についてから発生するということがわかっているので、初心者や、全然上手くできない技術に関しては、あまりあてはまりません。

初期段階では、正しい動きができず、1球1球試行錯誤することになるので、運動の内容が毎回違うものになるからです。

しかし、そこから上達して上手くできるようになってくると、だんだんと ❝文脈干渉効果❞ の影響を受けやすくなってきます。

ですので、 初心者への指導時や、上手くこなすことができない技術の練習時は、まずは ❝ブロック練習❞ を行い、上達していくにつれて、❝シリアル練習❞ や ❝ランダム練習❝ を取り入れていくのが良い方法と言えます。

 

コーチが選手の指導をする時には、様々な要素をふまえた上で練習内容を考えることになると思いますので、「❝ランダム練習❝ をしましょう!」というような単純な話ではないわけですが、考慮する時の1つの判断材料として、この ❝文脈干渉効果❞ を知っておくのも良いことだと思います。

 

 

 

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